米国政府を相手にする高配当企業
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1945年に終結した第二次世界大戦以降も、
これまで様々な戦争が世界で起こってきました。
ロシア-ウクライナ戦争が世界に大きな衝撃を与えていますが、
もちろん今起きている紛争はこれだけではありません。
このように、多くの紛争が継続するなか…
各国・地域は、侵攻の目的ではなく、
平和や自らの領域・権益を守るためにおいても、
様々な兵器を購入し活用しています。
侵略する側は、論理的な秩序を無視して、
化学兵器、生物兵器、など様々な
兵器を開発したり購入し、使用してきます。
もちろん、戦争は弱者を困窮させ、多くの不幸を生み出すもので、
あってはならないことです。
我々自身も地球上から戦争がなくなればいいと思っています。
他方、配当投資家としては
見逃すことができない別の視点があります。
それは、自国を守る目的のためにも様々な兵器が開発された結果、
防衛産業が成長しているということです。
例えば、その中の企業の一つが
レイセオン・テクノロジーズ (NYSE: RTX) です。
米国を本拠に航空宇宙・防衛事業を手掛ける世界有数の企業である同社は、
2005年から2020年2月まで17年間配当金を増やし続けてきました。
2020年5月に一度、減配されたものの
2021年5月、2022年5月と2年連続で
増配をしているのです。
レイセオン・テクノロジーズは、
ユナイテッド・テクノロジーズ (UTC) の
航空宇宙事業部門とレイセオンが経営統合し、
2020年4月3日に設立されました。
そして、その統合前には世界最大のエレベーター製造会社である
オーチス・エレベータ・カンパニー (NYSE: OTIS) や、
空調機器で世界有数のシェアを誇る、
キャリア・グローバル (NYSE: CARR) をスピンオフ*させています。
*企業が特定の部門を分離して新会社として独立させること。
世界の産業界に幅広い影響をもつコングロマリットとして事業運営がなされるなか、
経営の集中と選択をする過程において、航空宇宙・防衛に特化した点に
特徴があります。
現在、同社が扱う防衛製品には
軍用エンジン、ミサイル警報システム、
サイバー防衛システム、精密誘導兵器があり、
顧客の中には、米国政府はもとより世界各国の政府が含まれています。
このように顧客が世界の「国」そのものなわけですから、
一般企業を相手に取引をするよりも、
圧倒的に参入障壁が高く、
世界の防衛需要が高まるなかにおいて多くの需要を見込むことができるのです。
実際、レイセオンは2021年、は50億ドル弱(約6,900億円)の
フリー・キャッシュフロー*を生み出しました。
*企業が事業活動で稼いだお金のうち、自由に使える現金のこと。
そして、2022年も同様に、多額のフリー・キャッシュフローを
生み出す想定がなされています。
フリー・キャッシュフローが潤沢であるということは、
意図して株主に還元できる配当金を増やすことも可能となることを意味します。
実際、レイセオンは昨年30億ドル(約4,100億円)の配当を支払い、
今年も32億ドル(約4,400億円)と
多額の配当金を支払う予定です。
フリー・キャッシュフローの半分以上にのぼる還元額で、
いかに同社が株主を重視しているのかが見てとれます。
コロナ禍の2020年に減配したレイセオンですが、
需要拡大を受けて、その後は増配しています。
事業環境の改善を受けて、今後も継続的な増配も
期待できるかもしれません。
もちろん、戦争は許されることではありませんし、
レイセオンのような企業の“活躍が目立たない”世界の方が
健全なのかもしれません。
ただ、国境があり、多くの民族が地球上に共存する限り、紛争は存在しますし、
宇宙開発も今後ますます進められることから、
レイセオンのような特殊なビジネスモデルを有し、
参入障壁の高い事業展開をする企業は、安定的な成長が期待されます。
事業の性質や顧客属性上、経営陣は株主への配慮を最大限に払い、
結果として、継続的な増配もされやすい環境にあります。
配当投資家としては見逃せない企業といえるでしょう。
このように、どこに投資のチャンスが
眠っているかわかりません。
そのため、配当投資をして
資産形成をしていきたいと考えるなら…
様々な角度で物事を見ることが
大切なのかもしれません。
*本文ではレイセオンテクノロジーズを飽くまで一例としてご紹介しました。
そのため投資に関しては、最終的にはご自身でご判断ください。
P.S.
レイセオンのように
日本人が知らない、配当金が期待できる企業が
まだまだあります。
そんな企業をここでご紹介しています。