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運が成功を左右するのか?

ニューヨークタイムズのコラムニスト、ロバート・フランク氏は著書『成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学』において、貧富の差は才能や努力で決まるのではなく、運で決まると主張しました。

彼は、実力主義=神話であると考えています。

たしかに、運に恵まれて成功した人たちはいます。

例えば、宝くじの当選者がそうでしょう。

もっと一般的なのは、お金持ちの家に生まれた人、あるいはお金持ちの人と結婚したような人たちです(富裕層との結婚は通常、「運」だけの問題ではありませんが)。

もちろん、単に「その時」「その場所」にいて、その恩恵を受けたという人たちもいます。

しかし、今日の富の創造の多くは本当に「幸運」であることが決め手になっているのでしょうか?

 

私はそうは思いません。

たしかに、人によっては「運の悪さ」が成功しない決め手になっていることも十分わかっています。

才能があるにもかかわらず、青天の霹靂のような出来事に見舞われた人もいます。

交通事故で大怪我をした(あるいは亡くなった)人もいますし、飛行機の墜落事故で命を落とした人も数人知っています。

ある人は戦地に送られて大きな怪我を負い、ある人は重い病気を患ったり、予期せぬ挫折を経験したりした人もいます。

不運によって経済的成功の夢を絶たれてしまう、あるいは大きく遠ざかってしまう…そのような例は枚挙にいとまがありません。

しかしフランクは著書の中で、偉大な富は運によって築かれたものであると主張しています。

ビジネスマンは「結局、運が成功を左右する」という説明を嫌がるだろうが、それが真実であると述べているのです。

しかし、私自身の経験からそうは思いません。

私は長年、資産運用会社に勤務し、多くの富裕層(その多くは自営業者)と接してきました。

そして、たしかに彼らは自分たちを「信じられないほど幸運だ」「完全に恵まれている」と日常的に表現していました。

しかし…

だからといって、宝くじに当たったような気分だったかというと、そういうわけではありません。

ほとんどの人が、長く厳しい労働を強いられていたのです。

彼らは経営者として、大きなリスクを背負い、最初に出勤して最後に退勤する…そして誰よりも最後に給料をもらうという生活を何年も続けていました。

しかしどんなに努力しても、成功が約束されているわけではないことを、ほとんどの人が実感していました。

その結果、彼らは心からの感謝と謙虚な気持ちを抱くようになったのです。

財産を築いた人が幸運だったと思うことと、彼らを知らないニューヨークタイムズのコラムニストが「運が良かっただけだ」と主張するのは、全く別の話です。

フランクは、信頼できる統計学者が「データ」と呼ぶものを何も持っていないのです(残念ながら、運は簡単に数値化できるものではありません)。

その代わり彼が持っているのは、主張の裏付けに使うためのまったく根拠のない逸話です。

例えば、1960年代後半、中学2年生だったビル・ゲイツ氏はコンピューター・プログラミングの端末に無制限にアクセスできる全米で唯一の私立学校に通うという幸運に恵まれた、という話もあります。

ゲイツ自身はこう言っています。

「若くしてソフトウェア開発に触れることができたのは、あの時代の誰よりも恵まれていたと思う。そして、そのすべては信じられないほど幸運な出来事の積み重ねだった。」

これでゲイツの純資産が現在1,270億ドル以上であることの説明ができるのでしょうか?

たしかにこの経験はゲイツにとってプラスになっているとは思いますが、彼のビジネスと経済的な成功の説明にはなりません。

ゲイツがハーバード大学を2年生の時に中退しますが、ゲイツの両親は、彼が「卒業する頃には消えているだろう」と確信していたビジネスチャンスを追い求めた時、悲しみに暮れました。

しかし、彼はこれ以上ないほど正しいことを行ったのです。

わずか数年の間に、彼は自分のコンピュータのオペレーティングシステムをそのまま売るのではなく、IBM(NYSE: IBM)に8万ドルでライセンス供与をしました。

IBMのオープン・アーキテクチャ*は、他のPCメーカーもすぐに真似をするので、自分のシステムのライセンスが必要になると考えたのです。
*主にコンピュータなどの分野で、設計や仕様などの全部または一部を、オープン(公開、開放)にしたアーキテクチャのこと。

これは、大きな決断の一つだったと言えるでしょう。

世界中のパソコンメーカーとソフトウェア開発会社からロイヤリティを集めて、ゲイツは株主に大金をもたらし、1990年代には世界一の富豪となったのです。

 

ハーバードに入学できたのは「ただの運」ではありません。マイクロソフト(Nasdaq: MSFT)を設立できたのも「運が良かっただけ」ではありませんし、IBMにOSをライセンスしたのも「運が良かっただけ」ではないのです。

ゲイツと同じ学校でその端末にアクセスしていた他の中学生たちは、同じ運命をたどっているでしょうか?

彼らは今日、オラクル(NYSE: ORCL)やSAP(NYSE: SAP)を経営しているでしょうか?

米国の長者番付であるフォーブス400で、ゲイツのすぐ下にリストアップされているのでしょうか?

もちろんそうではありません。なぜならプログラミングの経験だけでは、ゲイツの財産を説明しきれないからです。

しかし、フランクはこんな話を次から次へとするのです。

彼の世界では、成功物語はすべて偶然の出会いや予想外の収入によるものなのです。

フランクはたとえあなたが賢くて才能があったとしても、それは学校に通い、経済的に価値のある技術を学び、一生涯、学習に励んだからではないと言っています。

知能は遺伝や育ちが関係しています。それらは親に大きく左右されるので、たまたま良い親に恵まれたとしたら、それは運が良かっただけだと言えるでしょう。

幸運な遺伝子、幸運な生い立ち、幸運な境遇、幸運な出来事。

もしあなたがお金持ちなら運が良かっただけで、もしお金持ちでないならそうではなかったということ。

先ほど述べたように、それが真実である場合もあります。しかしこれだけで米国に富が創造されるのでしょうか?

フランクは、黒人でも白人でも、金持ちでも貧乏人でも、老人でも若者でも、誰でも利用できる富を創造する実証済みの原則があることを知らないようです。

それについては今後のメルマガでお話しましょう。

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Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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