悪い決断をしてしまうタイミング
私は読者の方に対して何年も前から、賢く規律正しい投資アプローチをするようアドバイスしてきました。
これはプラスとマイナス、どちらの結果も予見して行動すべきだということです。
私の経験上、一流の投資家は「一流の知性」を持っているわけではなく、「一流の気質」を持っているのです。
特に、急ぐと悪い決断になりがちだということは覚えておきましょう。
実際、私はゴルフ場でそのことを思い知らされました。
私はローハンディキャッパー(ハンディキャップが少ない人のこと)で、ホームコースの18番ホール(パー5)を1アンダーで回ってきました。
18番ホールのティーグラウンドでは、それまで顔に当たっていた風が突然後ろから吹き始めたので、ティーショットはいつもより遠くへ飛びました。セカンドショットは、235ヤード先のグリーンに乗せたいところです。
ここでイーグルパットが決まればスコアは69となります(アマチュアで60台は珍しいことです)。
ところが、次の地点にたどり着いた途端、風向きが変わり、再び前方から吹きつけてきました。
これでは3番ウッドで235ヤードも飛ばせるわけがありません。
私はレイアップ*するしかありませんでした。
*グリーンまで距離のある場合などに安全な地点に刻むこと。
その時、前でプレーしている3人組がいたのですが、その中には常連のボブ・ロテラ博士がいました。ボブ博士を知らない人はぜひ知っておくべきです。彼は世界的なスポーツ心理学者であり、とても素晴らしい人物です。
これまで、オリンピック金メダリスト、テニス世界チャンピオン、メジャーゴルフ84大会の優勝者、バスケットボール、サッカー、ラクロス、陸上競技のNCAAチャンピオンと仕事をしてきました。そして現在、レブロン・ジェームズやローリー・マキロイといった世界屈指のアスリートの多くが彼のもとで働いています。またゼネラル・エレクトリック、フォード、コカ・コーラ、メリルリンチなど、多くの世界的大企業のコンサルタントも務めています(彼の著書『How Champions Think(仮邦題:チャンピオンの思考法)』は、全米の高校で必読書とされているほどです)。
そんなボブ博士と彼のグループがパッティングをしていると、風は再び私の背後から吹くようになりました。この風向きが変わる前に打てば、グリーンに乗せることができるかもしれません…私は、3人が握手をしてグリーンを去るのをじっと待っていました。そして彼らがカートに乗り込むことを確認してすぐに、私はショットを打ちました。
しかし、そのボールは風で高く左に流されてしまい、恐ろしいことに、カートの横に立って話をしているボブ博士たちの方に向かっていったのです。
私は「ファー!!*」と何度も叫びましたが、彼らは全く聞こえていません。
*ショット時のボールが大きく軌道を逸らしてしまった時に叫ぶ言葉
実は2年前、私の友人はショットが当たってしまい顔を6針縫ったことがあります。しかも今回のショットは、その時よりも遠い距離ですから、もし命中すれば、命を落としてしまう危険もあります。ボールが近づいていくにつれて、とても怖い気持ちになっていたことを今でも覚えています。
結果、幸いなことにボールは外れて地面に落ちました。3人は私の方を振り返り、私は両腕で「ごめん」というジェスチャーをして、ラウンド後に3人に謝罪しました。
これはとても愚かな失敗だったと思います。
グリーンに乗せればイーグルが取れるというプラス面ばかりを考え、友人に当たって葬式に出なければいけないというマイナス面を考えず、焦って行動してしまったのですから(一生「ボブ・ロテラを殺したのはあいつだ」と囁かれ続けたかもしれません)。
少し大げさすぎたかもしれませんが、これは投資にも通じるものがあります。
あなたが過去にしてしまった投資の失敗を思い出してください。その失敗は軽率なものが多かったのではないでしょうか?
高騰する前に衝動的に買ってしまった株や、利益が出る前にすぐに売却してしまった株。
後から振り返ると、物事がいかに違って見えるかということです。つまり焦って行動すると、多くの場合は恥ずかしさと後悔しか残らないということです。
アレックス
P.S.
賢く投資していくためのコツを学ぶなら、Oxford キャピタル・レターをご覧ください。