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投資家はニュースを見るな

ジャーナリストのニール・アーウィン氏とウェイ・イー・ツァイ氏は、ニューヨークタイムズの代表的なビジネスコラムで2021年をこのように始めました。

2020年末米国で起きていた困惑すべき経済の実態は、世界中が最悪な状態であったのに対し、金融市場ではすべてが希望に満ち溢れているものでした。

それは実に不気味な光景です。1日に約3,000人がコロナウイルスで死亡し、1週間に80万人が新たな失業申請をしているのに、資産価格は異常な高値を更新し続けていたのですから。現代の資本主義を好ましいと考えている人でさえ、経済の仕組みに何か深い問題があるのではないかと思うかもしれません。

史上最大の富の創造と反貧困のプログラムである資本主義擁護者である者として、何かが深刻に壊れているという意見に全面的に賛成です。

しかし壊れているのは「現代の資本主義」ではなく、それは「現代のジャーナリズム」なのです。

主流メディアによる事実の選択的な使用、脈略のなさ、絶え間ないネガティブな報道は、私たちの住む世界を歪め、誤った情報を与え続けています。

また投資家にも多大な負担を強いることになります。

これは私だけの意見ではありません。著名な教育者であるハンス・ロスリング氏も同様のことを指摘しています。

彼は著書『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』の中で、貧困と富、エネルギーと環境、銃と暴力、健康・教育・男女平等の世界的発展について、数十カ国の何千人もの人々に何百もの質問を投げかけたことを紹介しています。

彼が発見したのは、「ノーベル賞受賞者を含む」情報に精通した高学歴の人々でさえ、いや、特にそういった人たちの中にこそ存在する、膨大な無知のストーリーでした。

ロスリング氏はどのように結論付けたのでしょう?

「誰もが世界を壊滅的に誤解しているようだ。それだけでなく、体系的に間違っている。(テストの結果は)私の質問に答えた人々が全く知識を持っていなかった場合よりも悪いのだ」。

あなたの投資家としての最初の仕事は、世界の状況を把握し、潜在的なリスクと機会について正確な見解を得ることです。

しかしよく考えてみると、彼が発見したのは、ニュースを最もよく読む人でさえ「まったく知識がない」のと同じくらい情報不足だというのです。

いずれの場合もデータが保証するよりもはるかに悲観的な見方をしていたのです。

米国人の圧倒的多数がマスメディアに不信感を抱き、大半の投資家のリターンが悪くなってしまうのも不思議ではありません。

問題は、世界中で何が起きているのかを知るために、私たちは皆メディアに依存しているということです。

私たちの多くは、さまざまなテーマについて独自の視点を持つために必要なデータにアクセスすることができません。

一方ジャーナリストにはそれができるのですが、もしその事実が恐怖、怒り、恨み、妬み、悲しみをかきたてるような世界観、特に米国の見方を読者に与えないようならば、彼らはその感情を織り交ぜセンセーショナルな出来事にするのです。

もちろん、世界的なパンデミックの最中に問題や挫折を見つけることは難しいことではありません。

何百万人もの米国人が病気になり、何十万人もの人が亡くなりました。何百万人もの労働者が少なくとも一時的に仕事を失い、そして何千もの中小企業が撤退し、その多くが永久に廃業したのです。

2020年米国人の平均寿命は短くなり、貧困は加速し、暴力や家庭内暴力は増加しました。

そして政治的な偏向はかつてないほど悪化しており、一部はメディアによって煽られています。

冒頭のニューヨークタイムズの引用は、社説ではなくニュース記事からのものです。

しかし「世界中が最悪だ」という言葉がニュース記事の中に出てきたら、それはもう万事休すです。つまり記者は客観的であるふりさえしていないのですから。

かつてジャーナリストは、「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どのように」「なぜ」という事実を報道していました。

しかし、どこかでその使命が変わってしまったのです。

ジャーナリストは、読者(あるいは視聴者)が何を考え、何を感じるべきかを伝えない報道は、求められる物語に合わない結論を導き出してしまう可能性があることに気づいたのです。

既に述べたように、米国内や世界中ではネガティブな出来事が後を絶ちません。

今までもそうだったし、これからもそうでしょう。

しかし、それは物語の全てではありません。ましてや、最もバランスのとれた正確なものではないのです。

もっと言えば、もし私たちが恐ろしい時代に恐ろしい世界に住んでいて、未来も最悪だとしたら、金融市場は妄想と否定で出来た見せ掛けの世界を反映していることになります。

しかしそれは単に真実ではありません。

将来に向けての有望な動きやポジティブなトレンドはたくさんあります。

投資家が大きなチャンスを掴むためには、このような視点が必要なのです。

しかしそれは事実に基づいたものでしょうか?この見方は客観的なデータに裏付けられているでしょうか?また主要メディアが歪んだ世界観を伝え、それがあなたの視界を曇らせ、重大な損失につながるというのは本当に正しいのでしょうか?

その答えは間違いなく「イエス」なのです。

良い投資を。

アレックス

Alexander Green(アレクサンダー・グリーン)

Oxford Club チーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融・投資関係の4冊のベストセラーの著者で、40年のキャリアがある。米国で金融・投資のニュースレターであるOxfordキャピタル・レターを20年以上執筆しており、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェスト社はこのニュースレターをここ10年以上もの間、最もパフォーマンスの高い投資ニュースレター・ベストテンに選出している。 アレックスの記事一覧 ≫

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