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原油価格の上昇を予想する理由

※本文中の日付は、米国時間を基準としており、日本時間とは異なる場合がございますのでご了承下さい。

私たちは急速に「変曲点」に近づいています。

2020年12月14日以降、米国の新型コロナウイルスワクチン接種回数は2億6,000万回以上に達し、米国の全人口の約46.1%が少なくとも1回のワクチン接種を終えているのです。

そしてバイデン政権は、7月4日の独立記念日までに7割の成人が接種を1回完了することを目標としています。

そんなわけで、新型コロナウイルスによるパンデミックの長い悪夢は終わりに近づき、「通常」への回復は始まっているのです。

そして、それが2021年最もパフォーマンスの悪いセクターの1つを急上昇させたのですが、それ自体は予測出来ていたことでした。

問題は、それがどれくらい上昇するかということです。

3ヶ月で30%以上のリターン

2020年の株式市場には驚くべき瞬間が多数ありました。

例えば、2020年3月には株式市場史上、最速で30%の下落がありました。

これに続いて、過去最速で弱気相場から強気相場へ回復しました。そして、原油価格は崩壊し、史上初めてマイナス圏まで下落したのです。

と言うのも、世界中の企業が閉鎖され、飛行機、電車、車の大半が稼働しなくなったので、原油の需要はほとんどなくなってしまったのです。また、米国の原油価格は、あり得ないほどの安値から回復しましたが、2020年の大半は1バレルあたり30ドルから40ドル程度で推移しました。

この水準は、2015年と2016年に世界の原油市場が崩壊し、石油輸出国機構とその10の原油生産同盟国(OPECプラス)が世界に原油を氾濫させ、米国の原油生産者を破産させようとした時以来、目にしたことがない水準でした。

しかし、主にワクチンのおかげで、2021年に入ってから反発が見受けられます。

2021年の初めに、私は米国の原油が1バレルあたり60ドルに戻ると予想しました。これは、2020年の初めには見られなかった水準です。

私は、2021年中にエネルギー消費がパンデミック前の水準まで回復するとは思っていませんでしたし、今でも考えは変わりません。とは言え、原油がこの価格に戻る可能性はあると思っていました。なぜなら、多少の揺れはあっても、エネルギーが数年に及んで上昇する絶好の機会があったからです。その予測が現実になるのにそれほど時間はかかりませんでした。

これまでのところ、米国の原油価格は30%以上上昇し、65ドル以上で取引されています。

ワクチン接種の拡大に加え、全米に大寒波が襲い、寒さに慣れていない地域の製油所が閉鎖したことで原油価格は更に上昇しました。

しかし、本当の原動力となっているのは、世界が回復に向かっているということなのです。

そして、この回復が歓迎されている兆候が見始められています。

例えば、ニューヨークには混雑が戻ってきていて、3月には2019年11月以来最速で有料道路の交通量が増加しています。さらに、夏のドライブシーズンが間近に迫っているのです!去年より繁盛することに違いありません。

また、全米で旅行が再開されており、夏休みや7月4日の独立記念日の頃には多くの人に予防接種が行き渡ってるはずです。

と言うことは、原油の需要が急増しそれに伴って原油価格も急騰するということですが、どれくらい上昇するでしょうか?

原油価格は100ドルに到達か

過去10年間、米国の原油生産はパンデミック発生まで著しく上昇傾向にありました。

米国ではシェール層が豊富なため、ロシアとサウジアラビアを席巻し、世界最大の原油生産国になりました。

2020年2月、米国では日量1,310万バレル以上の原油が生産されましたが、2020年8月には26%減の日量970万バレルに減少しました。これは2017年以来最低水準です。

今日ではわずかに回復が見られ、日量約1,100万バレルに戻っています。そして、米国エネルギー情報局は2021年には平均値に戻ると予想しており、2022年には日量1,200万バレルまで上昇する見込みです。

また、OPECプラスは減産規模を日量720万バレルで維持することに合意していますが、さらなる減産が決定した場合、世界中で現在よりも深刻な供給不足に陥るでしょう。と言うのも、2021年の世界の原油消費量は日量9,750万バレルと推測されていますが、生産量は日量9,710万バレルなので、消費量を下回っているのです。

これによって、世界の原油価格にさらに圧力がかかることになるでしょう。しかし、OPECプラスが手綱を引き締め、減産規模が縮小される場合には原油価格が急騰することも有り得ます。

実際に、ゴールドマンサックス (NYSE: GS) は、原油価格市場の国際指標である「北海ブレント原油先物」が、7 -9月期までに1バレルあたり75ドルに達すると予測しています。また、投資銀行のパイパー・サンドラーは、ブレント原油は2021年末までに1バレルあたり100ドルを超えると予測しています。

米国の原油価格とブレント原油価格の価格スプレッドは僅差です。そのため、2021年の残りの期間の原油価格は非常に強気になるでしょう。

私はここで、2021年の米国の原油価格予測を75ドル以上に引き上げたいと思います。現在の状況からすると、立ち直りは予想より早そうです。何と言っても、米国の原油生産量は数年ぶりに低水準にあるのです。

しかし、ここでもう一つ大きな問題点があります。米国で稼働中の石油掘削装置は402基しかなく、1年前から49%減少しています。そして、そのうち原油の掘削をするのは309基だけです。つまり、需要が加速すれば、米国の原油生産者は増産競争に巻き込まれることになるでしょう。そして、供給不足になると、非常に強気な状況を引き起こすのです。

つまり、2021年に入ってから米国の原油価格はすでに急騰していますが、まだまだ多くのアップサイドがありそうなのです。そして、このセクターに乗るにはまだ遅くありません。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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