トレンド投資

コインベースのナスダック上場

※本文中の日付は、米国時間を基準としており、日本時間とは異なる場合がございますのでご了承下さい。

2021年4月14日は、暗号資産にとって非常に大きな1日となりました。こんなにも大きなニュースはここ暫くなかったことです。

米国最大の暗号資産の取引所であるコインベースが、一般的な新規株式公開(IPO)ではなく、ナスダック市場に直接上場したのです。

あなたが山奥にこもっていなければ、暗号資産が全般的に高騰してきたことはご存知だと思います。

ビットコインは、暗号資産の中で時価総額が最大ですが、2021年に倍以上になり、過去12ヵ月で750%以上上昇しました。

現在、ハイブ・ブロックチェーン・テクノロジー (OTC: HVBTF) 、ライオット・ブロックチェーン (Nasdaq: RIOT) 、マラソン・デジタル・ホールディングス (Nasdaq: MARA) といった暗号資産のマイニング企業が上場しています。しかし、コインベースは50以上の暗号資産の取引所であるため、同社の上場はこの業界にとって画期的なマイルストーンと言えるでしょう。

ここで疑問が浮かび上がってきます。投資家はこのナスダック市場への上場に参加すべきでしょうか?

6ヵ月で20倍の増加

単刀直入に言いますが、私は上場初日の取引は、あまり好きではありません。

しかし、コインベースに関して言えば、いくつか気がかりなことがあります。

コインベースによる報告では、2021年3月15日までの私募市場における加重平均株価は、343.58ドルでした

つまり、同社の時価総額は約700億ドルに達します。また、ウォール街のアナリスト予想では、上場によって時価総額が1,000億ドルまで膨らむ余地があると考えられていました。

さて、暗号資産取引所のFTXは、この盛り上がりに乗じてコインベースの上場前の取引状況を開示。FTXによると、583ドル以上で取引されていたとのことでした。

さて、暗号資産取引所のFTXは、この盛り上がりに乗じてコインベースの上場前の取引状況を開示。FTXによると、583ドル以上で取引されていたとのことでした。

ということは、上場によって、同社の時価総額は2,500億ドルになるということだったのです!

かなり高額に思えるかもしれません。もしくは、全ての暗号資産を合わせた時価総額が、最近2兆ドルに届いたことを考えたら、コインベースはまだ安価に思えるかもしれません。

私には、これは熱狂的陶酔感に満ちた状況に感じられます。

ここから本題に入ります。

2020年第3四半期(7 – 9月期)において、コインベースの私募株式はおよそ28.83ドルで取引されており、同社の時価総額は53億ドルでした。この額が馬鹿げた程低かったということなのでしょう。コインベースは、業界では過小評価されていました。

しかし、2020年9月の終わりから2021年4月中旬までで1,922%も急騰したのです!

私は暗号資産の可能性を認めますし、コインベースのファンでもありますが、6ヵ月強で価額が20倍近くに増加したことは、少し過剰だと感じています。投資家が、痛い目に遭い、貧乏くじを引くように仕掛けられている気がしてなりません。

コインベースがFTXから高い評価を受けることにより、同社の時価総額は、CMEグループ (Nasdaq: CME) 、インターコンチネンタル取引所 (NYSE: ICE) (ニューヨーク証券取引所の親会社)、ロンドン証券取引所グループ (LSE: LSEG) 、ナスダック (Nasdaq: NDAQ) よりも高くなります。

実際、コインベースの時価総額が2,500億ドルとなった場合、上記の企業を合わせた時価総額よりも高額になります。

また、仮に評価額が1,000億ドル程度となった場合でも、依然として上記の取引所よりも時価総額は高くなります。

コインベースは持続可能か?

財政上の観点から見てみましょう。

2021年4月初旬に発表された第1四半期(1 – 3月期)の決算によると、取引量は3,350億ドルでした。これは、2020年の1年間の取引量の1,930億ドルから73.5%増でした。

そして売上高は18億ドルを計上。2020年の1年間で13億ドルでしたので、第1四半期のみで過年度の売上高記録を更新したということです。

また、預かり資産額は2,230億ドル (うち機関投資家からは1,220億ドル)であり、暗号資産市場全体の11.3%を占めていることを発表しました。これは2020年の900億ドルから150%増加です。

今までの話はさておいて。コインベースは、全ての暗号資産の価格に影響を受けやすいだけでなく、月間の取引利用者の増加による変動幅が大きい銘柄です。

言ってみれば諸刃の剣です。

片方の刃は、分かりやすいものです。暗号資産の価格が強気である場合、コインベースの価格は上昇するでしょう。しかし、暗号資産の価格は上下を繰り返すものです。

もう一方の刃は、月間のサービス利用者数や会員数です。それは、ネットフリックス (Nasdaq: NFLX)、スナップ (NYSE: SNAP) 、ツイッター (NYSE: TWTR) 、スポティファイ・テクノロジー (NYSE: SPOT) 及びビデオゲーム企業やプラットフォーム等の企業を見る際に、私達が本当に注目している唯一の数字なのです。

SNS関連企業、電子商取引企業、ビデオゲーム企業がどんなに業績と売上高を上げても、月間のサービス利用者数が落ち込んだ場合、株価が暴落しかねないと度々申し上げています。

なぜなら、投資家が売上高を鑑みて、株式にこれほど高いプレミアムを躊躇なく支払う主な理由は、月間のサービス利用者数のためだからです。月間のサービス利用者数 (もしくは、この場合は月間の取引利用者数) が急速に増加している場合、その成長は持続可能なのです。

しかし、少しでもつまずくことがあれば、それは警告のサインです。そうなってからでは逃げ遅れる可能性があります。

さて、第1四半期(1 – 3月期)において、コインベースには5,600万人の認証済み利用者がおり、そのうちの610万人は月間取引利用者であったことを発表しました。

取引所の売上高は、毎月の取引利用者数に直接影響を受けます。売上高の約96%は、手数料によるものだからです。そして2021年は、400 〜 700万人の取引利用者が見込まれています。暗号資産の価格、特にビットコイン価格が暴落した場合は、売上高が減ると想定されます。逆に、暗号資産全体の上昇が続けば、売上高は上昇すると想定されます。

そして、ここで最後に競合についてお伝えしておきましょう。

今後はバイナンス、ビットスタンプ、ジェミニ、クラーケン等のコインベースの競合他社が、取引手数料を下げる、もしくはゼロにすることが想定されます。従来の仲介業者が、暗号資産の取引を開始する可能性は考慮する必要は無さそうですが、競合激化の懸念から、コインベースの市場占有率や、増収に向けたビジネスモデルは崩されるかもしれません。

暗号資産の取引への参加を考えている方達は、上昇一服、または少なくとも次にビットコインの価格が下落傾向になることを待つのが賢明かもしれません。

色々お話してきましたが、現在はデジタル通貨が継続的に検証され、世の中で決済手段の代替資産として根付いていく正念場なのです。長期的に見た場合、世界各国の実態経済における暗号資産の利用は拡大すると考えられます。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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