トレンド投資

群衆心理で投資家は破産する

トレンドはすぐに移り変わります。

そして、泣き目を見る投資家はたくさんいます。

毎朝、その日の「流行の株」について問い合わせのメールやメッセージが届きます。

それはゲームストップ(NYSE: GME)から始まり、AMCエンターテインメント・ホールディングス(NYSE: AMC)、さらには”ジョーク通貨“としても知られる暗号資産「ドージコイン」にも広がりました。

しかし、欲望、無知、憤りでできた心の病は数百万人もの投資家に手に負えないほど伝染していっているようです。

そして、コス(Nasdaq: KOSS)、サンダイアル・グローアーズ(Nasdaq: SNDL)、ネイキッド・ブランド・グループ(Nasdaq: NAKD)、その他数十社が影響を受けました。

合理的に投資家は、この新しい伝染病と向き合っていかねばなりません。

このような時期は、まさに自分自身の投資癖を見直し、経済的自立を脅かしかねない間が抜けた行動をとらないよう、自戒のタイミングです。

もう一つの「普遍定数」

(普遍定数とは、物理学の基本法則を表す式の中で、変数の値に関係なく常に一定の値をもつ定数。)

心配しないでください。あなたは一人ではありません。

どんな人でも投資の失敗や踏み違いをした事があります。

成功より失敗することの方が学ぶために大切だということが私の持論です。

失敗には痛みが伴い、失敗により謹んだ行動をとれます。

失敗はどの方向に向かえば良いかを教えてくれます。

残念なことに、多くの人が同じ過ちを何度も繰り返します。 そして市場では、間違いを繰り返せば損失につながるかもしれません。

さて、重要な問題は私たちの脳です

私たちの脳は、お金に関して合理的な決断を下すようにできているとは限りません。

代わりに、私たちはひどい欠陥とも思えるほど愚かで、感傷的で、非論理的になりやすい時もまれにあります。

例えば、ゲームストップが1,000ドルの株であると主張し、「ダイヤモンドハンド」の話をしている自称「投資家」や「トレーダー」を見れば分かります。

(編集部注:ダイヤモンドハンドとは、ツイッターや米国の掲示板サイト「Reddit(レディット)」等で使用される絵文字 💎🙌 で、何があってもその株を保有し続け、絶対売らない、という意味を指します。)

ゲームストップなどを高額で購入した投資家は、おそらく本来のゲームストップ株の価値を理解していないのでしょう。

行動経済学は、私の好きな分野の一つで、投資家がこれを理解していることは重要だと考えています。 だから、ノーベル賞を受賞したリチャード・セイラー著の「行動経済学の逆襲(Misbehaving)」を自分のオフィスの本棚の目立つ場所に置いてあります。

 「You talk a big game. (大口を叩く)」

という言い回しを聞いたことがあるでしょう。行動経済学者によると、私たちの多くは、特に金融と投資において、この様にしがちです。

SNS掲示板で一部の投稿者たちが荒稼ぎしているという書き込みに多くの疑念を感じているだけでなく、「言うは易し行うは難し」という一面もあると考えます。

たくさんのことを書き込みますが、ほんの少し、もしくは全く行動に起こさないこともあります。

例えば、「徹底的にリサーチする」と言ったとします

ファンダメンタル(企業の売上や利益、財務内容等の基礎)的視点で堅実な企業を選ぶと自分に言い聞かせます。

または、ロジカルに売却を決定すると固く心に決めます。

今回は本気です!と。

だが実際には、口にした通りの行動をとることは少ない時もあります。

恐ろしい内容には立ち入りませんが、ほぼすべての投資家が株式市場で合理的ではない決断をすることが繰り返し研究されてきました。

行動経済学は実質的に光速や電荷のような「普遍定数」かもしれません。

集団の狂気

今年、レストランが再開すれば、同社の売上は49%以上増加し6億1,145万ドルになると予想され、直実に利益化することが見込まれています。

私たちは何年にもわたって、投資家の感情のサイクルについて研究してきました。

このサイクルは、狭いフレーミング、固定観念(アンカリング)、心理的な会計(人はお金について決断を下す時、様々なことを合理的に考慮に入れず狭い視野の中で判断してしまうこと)、リスク分散のし損ない、メディアの反応、後悔、憶測で楽観視しすぎている非合理的行動によって駆動します。

金持ちへの憎しみがどのように大勢の投資家を貧しくさせるかについても説明がつきます。

現在、最も顕著に現れている非合理的行動の原動となったのは、ハーディング心理(ハーディングは「群れ」の意味で、人は一般的に世の中の多数派と同じ行動をとりたがること)です。

ソーシャルメディアと「ミーム株」(業績を度外視して値動きする株)の急増により、このハーディング現象は現在、市場で日常的に見られるようになりました。

ハーディングとは単純に、ある証券から別の証券へと投資家が互いの行動を追い合うことです。 その動きにはファンダメンタルな理由はありません。 投資家は、他の投資家がしていることを盲目的に行っているだけです。 これはパニックによる売却と株価の急騰につながる向きにあります。

ハーディングの特徴は、裏付けとなるファンダメンタルな理由を欠いた非合理的株価上昇と下落です。

ゲームストップ、AMC、そして特にドージコインは代表的な例になり得ます。

さて、もしあなたが「群れ」の先頭にいて、他の誰もあなたの目の前にいないなら素晴らしいことです!あなたに有利な状況となるでしょう。 しかし、群れの後方にいればいるほど、あなたの視界を遮るものは多くなり、さらには悪臭が漂い、あなたのパフォーマンスは低下するでしょう。

ハーディングが大惨事で終わることは避けられません。

今でもドットコムバブルはハーディングが引き起こしうる被害の顕著な例として知られています。

それでも、「今回は違う」と言い張る人は確かにいるでしょう。

その言葉は、投資において最も危険な言葉の一つです。

そしてこれは単にハーディングだけの問題ではありません。 こういった行動のすべては大半の投資家が陥りがちな、とても非有効的な「高く買い、低く売る」戦略の特徴でもあります。

その言葉は平均的な投資家の敵で、その犠牲になってしまうことは安易なことです。

付箋に書き留めたり、印刷しオフィスの壁に貼るなど、このようによくある失敗に注意することを自分にリマインドするために必要なことは何でもしましょう。

最終的に、どっと押し寄せた群れは崖から落下することになるからです。 そして、その瞬間が訪れた時、あなたは群衆の一員になりたくないはずです。

ゲームストップ株を400ドルで購入し1,000ドルになると信じていたり、AMCを20ドル、KOSSを127ドルで購入した、違った方向に誘導された人たちのことを忘れないでください。 彼らはおそらく、「また値戻りするだろう!」と自分に言い聞かせているでしょう。

彼らは「ダイヤモンドハンド」を持っています。 しかし現状は、破産が近付いているだけです。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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