トレンド投資

ゲームストップ株価に見る投資家の感情サイクル

「恐怖心を抱け」

1月下旬に、私の第六感が叫んでいました。

株式市場が現実と乖離している時は、しっかりと注意を払わなければなりません。市場の片隅で異常なほどの高揚感が湧き始めていても、一方では警鐘が鳴り響いていました。

通常、投資家が経験しがちな感情サイクルについてご説明しましょう。

興奮が高揚感に変化する時、投資家は最大のリスクに直面すると言われています。この時こそ、慎重すぎるくらいで行動しなければならないのです。

1月下旬の株式市場では、非常に不自然なことが起こっていましたが、これは後に続く一連の不自然な値動きの最初の兆候だったといえるでしょう。

群衆による報復

1月下旬に、ゲームストップ (NYSE: GME) の株価は300ドルを突破しました。大規模な、ショート・スクイーズ(オプションにおける売りポジションの買戻し)が続いていたのです。

1月中に同銘柄は1,900%以上も急騰しました。

合理的に考えて、ゲーム販売会社の株価がこの水準まで高騰することはあり得ません。同社の評価額が200億ドルを超えたことはかつてありません。

それは狂気の沙汰でした。

また、同時期、AMCエンターテインメント・ホールディングス (NYSE: AMC) の株価は300%上昇し、20ドル以上の値をつけました。

経営破綻の危機に瀕していた、この映画館運営会社は、2018年以降これほどまでに高値をつけたことはありませんでした。

当時、この2つの取引に関連するネット掲示板では、高揚感と憎しみがあふれていました。この二社がエンターテイメントとゲーム界の未来になるという、浮ついた高すぎるビジョンと、ウォール街(ヘッジファンド)を最大限に傷つけることを狙った、恨みと復讐のため血に飢えた欲望とが渦巻いていました。

これは暴民による支配といえたでしょう。

要するに、合理的思考または基本的な評価基準すら、放棄されていました。一連の騒動は、共謀と市場操作によって駆動していたと言っても過言ではありません。

彼らの主張は、「もし人々が買い続ければ、つまり、マルチ商法のように友人や家族や同僚に購入を持ちかければ、株価が高くなるだろう」というものです。

確かに、株式の需要は株価上昇に繋がります。それが市場の基本的な仕組みです。そして、これが記録的な大規模なショート・スクイーズだったでしょう。

しかし、彼らは勘違いしています。十分な利益が出たと確信し、全員が一斉に売却し、大量の札束を手にして手仕舞いできると思ったら大間違いなのです。

それは空想的な見方でしかありません。

そして、これほど馬鹿げたことはないのです。

なぜなら、最終的に痛手を負うのは彼らだからです。彼らは元々、標的にしていた者を傷つけるのではなく、この大規模な計画に巻き込まれた家族や友人たちを傷つけることになるのです。

ところで、この騒動の裏で操っていたリーダーたちは大金を得てポジションを手仕舞いしたことは言うまでもありません。盲目的に彼らの行動を追った「軍隊」が株価を押し上げ、さらに多くの投資家を巻き込んでいるのを見て彼らは大笑いしたはずです。盲目のフォロワーたちも程度の差こそあれ利益を得たことでしょう。

しかし、恐ろしいことは他にもありました。

AAGH!(アーッ!)

市場の現実離れはゲームストップとAMCだけにとどまりません。

アメリカ・グレート・ヘルス (OTC: AAGH) も今年に入って爆発的な上昇を見せました。

一時は、このパッケージ食品会社の時価総額は60億ドル付近まで達しました。

これは同社のたった一人の正社員にとっては朗報だったことでしょう。

読み間違いではないですよ。正社員はたったの一人です。

では、この素晴らしい企業はどのような面で優れているのでしょうか?

回答できる人は皆無に等しいでしょう。

同社のサイトは機能すらしないのです。事業内容欄には「重要な事業を行っていない」とだけ記載されています。

しかし当時、同社に関するネット掲示板は、この波に乗り遅れたという質問や後悔で溢れていました。今乗って置くべきか、下落するのを待つべきか?と。

そして、この市場への様式として、回答の大多数は「ゲームストップ株を買え」というものでした。

株式市場は、当時、わずかに熱を帯びていました。システムに「病気」が蔓延していました。一種の感染症のようなものです。

大胆不敵にも友人や家族を破滅に追いやるようになっていたロビンフッド投資家も大勢いました。そして、そういった行動は、合理的な投資家をハラハラさせたことでしょう。

格言にもあるように、「皆が貪欲なときに恐怖心を抱き、皆が恐怖心を抱いているときに貪欲であれ」です。当時の株式市場では、欲によって駆り立てられた過剰な行動がありました。そして、それは必ず涙の結末を迎えるものなのです。

ハイリターンを願って。

マシュー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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