トレンド投資

経済的安定のための未来計画

私は未来を生きています。

私は常に明日か、半年後か、もっと先のことばかり考えています。今日のことは心配していません。今日のことは、昨日のうちに考えていたからです。

だから、「現在」は私にとって大概意味のないものです。ゲームプランは書き終えているのですから。

私がボラティリティや株価の急落に動じないのもそのためです。私にとっては常にチャンスとなります。

市場が停滞している時に株価が10%、もしくはそれ以上下落したら、それは儲け物です。なぜなら、数ヶ月以内に株価は今以上に上昇するからです。数日でそうなることもあるかもしれません。

最近あったような大規模な市場の崩壊は、急に起きて、あっという間に過ぎていくものです。しかし、高値を更新する動きははるかに長く続き、大規模な利益を獲得することができます。

だから、私は未来が現時点よりもはるかに重要だと思っています。

また、このような考え方が、より良い投資家になるばかりでなく、より素晴らしい投資判断にもつながることが研究によって明らかになっています。

ですが、それ以上の事実があるとしたらどうしますか?

あなたが話す言語が未来に関係していて、それがより良い投資家を誘導してくれるとしたらどうでしょうか?

これは、過去10年の間に再浮上してきた考えです。

私は行動経済学が好きで、この考え方に興味をそそられてきました。行動経済学者にはノーベル賞受賞者のリチャード・ターラーなどがいます。

1930年代、言語学者のエドワード・サピアとベンジャミン・ウォーフが言語的相対論を提唱しました。

私たちが話す言語の構造が、各々の世界の見方にどのような影響を与えているのか、ということについて語っています。英語を話し、読み、書きながら育った人は、北京語を話し、読み、書きながら育った人とは、ある概念について異なる考えを持っているというものです。

これは文化的なものではありません。言語の構造に関係しているのです。

数年前、行動経済学者のキース・チェンは、言語的相対性理論の考え方に立ち返り、将来のための貯蓄や計画を立てる能力との間にある相関関係ついて研究していました。

彼の疑問は、「現在と未来の間に明確な文法的区別がない場合、その言語を話す人は未来と現在に違った見方をするのか」というものでした。

例えば、英語では、「私は劇を観に行くつもりだ (I will go to the play.) 」と言います。英語は未来時制が強い言語です。現在と未来の出来事を区別するために、時間を時制に分けます。

しかし、北京語では、「私は劇を観に行く(I go to the play.) 」と言います。北京語には、現在と未来の区別がないのです。

フィンランド語も似たようなもので、「今日は寒い」と「明日は寒くなる」には時制的に区別がありません。現在のことを言っていても、未来のことを言っていても、同じ時制が使われます。

このことは貯蓄にどのような影響を与えるのでしょうか?潜在的には投資家としての質にどのような影響を与えるのでしょうか?

興味深いことに、先進国と発展途上国の76カ国を調査した結果、チェン氏は未来時制が弱い言語の話者の方が、将来への備えを行うことに優れていることを発見しました。

これらの結果は、様々な経済的要因を考慮した上で、同じ収入、信仰心などの世帯を比較したものです。同じ国の中であっても、唯一の違いは言語だったのです。

チェン氏は、英語のような未来時制が強い言語の話者は、退職後の資産が39%少ないことを発見しました。また、一般的に貯蓄をする人が少なく、不健康な習慣で日常生活をおくっている人達が統計上高かったのです。

スイスのように3ヶ国語が話される国であっても、未来時制が強い言語の話者の貯蓄は、そうでない言語の話者の36%に留まりました。

上のグラフからは、米国と英国の貯蓄率が低いことが分かります。また、他の未来時制が強い言語を話す国々がその前後に固まっています。

反対に、ルクセンブルク、ノルウェー、スイス、日本、フィンランドなどの未来時制が弱い言語を話す国々は、GDPと比較して貯蓄率が高かったのです。

チェン氏は、これらの国々では現在と未来が同じように重視されていることを見出しました。また、それに応じて計画を立てていたのです。

チェン氏の言語的相対論の研究には懐疑的な声もありますが、重要な点もあります。

未来時制を使って「老後のために貯蓄を始めるつもりだ(I’m going to start saving for my retirement.)」とか「次に市場が急落したら投資を始めるつもりだ(I’m going to invest after the next sell-off)」とは言わないようにしましょう。

文法的に言い訳をすることに罪悪感を感じる人も多いでしょう。未来はいずれ辿り着く遥か遠い地点だと言い聞かせているのです。

問題なのは、それが嘘であるということです。

未来は日々刻々と近づいて来ます。

現在よりも未来を重視してみましょう。経済的な決断や、投資となれば尚更です。

今日考えるべきはこの先に来たる未来のことです。

ハイリターンを願って。
マシュー・カー

Matthew Carr(マシュー・カー)

Oxford クラブ・ジャパンのチーフ・インベストメント・ストラテジスト。金融業界で20年のキャリアを持つ。 企業の中ではある一定のサイクルで株価が上下する銘柄があると言われており、マシューの専門はそのサイクルを見つけ出すこと。 彼の専門領域は石油・ガスといった伝統的な産業から、AI、5Gといった最先端テクノロジーなど多岐にわたる。 マシューの記事一覧 ≫

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