米国配当株投資

次…配当停止するかもしれない銘柄、UPSとは?

所要時間: 4分.

この記事のポイント

  1. UPS(NYSE:UPS)のフリー・キャッシュ・フローの成長は不安定

  2. ペイアウト率「89%」は、高すぎる

  3. 配当安全性評価は「F」


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この配送会社の配当が、危機に瀕する可能性が出てきました。もし、あなたが、この配送会社の株式を配当目的に保有していたなら、あなたもその危機に瀕する可能性があるかもしれません。状況が状況だけに、一刻を争うかもしれないので、単刀直入に申し上げましょう。

配当の危機に瀕する可能性のある配送会社とは「UPS(NYSE:UPS)」です。同社は、何十年も一貫して配当を継続してきました。そして、1999年以降は、2009年を除いて毎年株主への配当を引き上げてきました。もちろん、これには、直近の2月にあった5%の引き上げも含まれています。

UPSのキャッシュ…どうなる?


でも、今状況は難しい方向に進んでいます。そのような中、同社は現在の四半期配当として1株あたり$ 1.01を引き続き支払うことができる体力があるのでしょうか?このコロナウイルスの影響により、経済が停滞すれば、世の中の送られる荷物は減るでしょう。それを考慮すると、同社に配当を支払い続ける体力があるか気になるところです。そこで、彼らのフリー・キャッシュ・フローを見てみましょう。

同社が配当を支払い続けられるか?端的に言うと、この数字が「できない」と語っています。過去のフリー・キャッシュ・フローは、このグラフを見れば一目瞭然で、数年間一貫して推移していません。2017年にはマイナスになり、2018年に増加したものが、今度は2019年には急激に低下しています。

このように、同社のフリー・キャッシュ・フローの成長は、不安定です。そのような中、今年の予測は、2016年をわずかに上回る数字です。ただし、これはコロナウイルスの影響を受けないことが前提の数字です。つまり、影響を受けている今を考えると、この数字の達成は非常に厳しいでしょう。

さらに…2つのマイナス材料


また、同社には悪いニュースが、もう一つあります。それは、航空会社が貨物ビジネスに参入していることです。従来の事業で失われた収益を補うことを目的に、近年、航空会社は貨物ビジネスに参入してきました。私は、空路と陸路で全く違うので、影響は少ないと予測していました。ですが、もし今年のフリー・キャッシュ・フローが2016年に近い場合は、航空会社から影響があったと推測できるでしょう。

さらにもう一つマイナスの話があります。現在、同社の株主への還元率を表すペイアウト率は、高すぎると言っても良い状況です。同社は、昨年32億ドルの配当を支払い、23億ドルのフリー・キャッシュ・フローを生み出しました。この数字を見る限り、配当を支払うのに十分な現金を生み出していないとも考えられます。

プラス…もう一つのマイナス材料


特に今年は、37億ドルのフリー・キャッシュ・フローに対し、33億ドルの配当を支払うと予想されています。これをもとに計算すると「ペイアウト率は「89%」と高すぎると言っても良い数字です。私の配当株戦略では、通常75%以下のペイアウト率を選定基準としています。これくらいのペイアウト率ですと、景気後退により、フリー・キャッシュ・フローが株主に支払われる金額を下回ったとしても、驚く水準ではないと、私は考えています。

USPは、配当金を支払い続けている素晴らしい実績があります。ただし、それはここまでの話です。この実績が、このまま継続できるかは、非常に疑問です。もし、予測よりも今年の状況が悪化した場合、配当は危険に瀕する可能性があります。場合によっては、株式市場の今の流れを考慮すると、配当のストップも想定されるかもしれません。

UPSの安全性は?


よって、私はUPSの配当の安全性評価を、最も低い「F」とします。

配当の安全性評価:F

最近は、このような株式市場の状況でも外部環境に左右されることなく「A」の評価ができる銘柄を取り上げてきました。今回は、全く反対に、このような状況で外部環境に左右され、企業自体の体力が不安定と思われる「F」評価の銘柄を取り上げました。

ただし、これは私たちのように配当株戦略を採用する投資家にとって、良い知らせです。この銘柄には配当を期待しないほうが良いということが明らかになりました。このようなタイミングでは、上手くいく銘柄を探すことも重要ですが、上手くいかない銘柄を把握しておくことも重要です。ぜひ、このような両方の情報を参考に、周囲の慌てる投資家とは違った、安定した投資を心掛けていきましょう。

良い投資を!

マーク・リクテンフェルド


いかがでしたか?
少しでもこのアメリカの強い株が「いいな」と思ったら1株からでもいいので買ってみてください。(アメリカの株は日本と違って1株から買うことができます。)

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Marc Lichtenfeld(マーク・リクテンフェルド)

Oxford Club チーフ・インカム・ストラテジスト。ウォール・ストリートを含め25年の経験のある配当投資の専門家。「Get Rich with Dividends(邦題:日本人の知らない秘密の収入源 年100回配当投資術)」著者。2013年に配当投資の専門誌Oxfordインカム・レターを創刊し、世界中に読者を持ち有料購読者は8万人を超える。FOX、CNBC、Forbesなどの有名メディアはもちろん、BloombergやBarrons、The Wall Street Journalといった権威ある金融専門メディアにも多数出演。 マークの記事一覧 ≫

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